中西寛, 石田淳, 田所昌幸(著) 『国際政治学』
国際政治学会の中核となる先生方3名による新たな教科書。
この分野は『国際紛争』がしばらく独走状態だったが、有斐閣の本気を感じる一冊。
3名の専門とする研究分野について、全7章に凝縮して濃い記述が見られる。
ゲーム理論と国際政治経済への記述が濃いのは、同様の書籍と違って珍しい。
久保慶一・河野勝編『民主化と選挙の比較政治学』
田中(坂部)有佳子「紛争後社会における反政府勢力の政治参加と暴力」
紛争後、時間が経過すると民主主義が自己拘束的になって紛争リスク抑止に繋がるということを実証分析。停戦・和平後に民主化に乗り出す最初の段階が、まさに紛争リスクの高いクリティカルなポイントなのであって、そこをどう乗り切るかが知りたい。
柳澤協二『検証 官邸のイラク戦争――元防衛官僚による批判と自省』
小泉首相のイラク戦争についての官邸の動き方は意思決定プロセスでなく、意思「実行」プロセスであった。
官僚は最後の判断を小泉総理に委ねていた。アメリカを「支持」するとかなり前のめりの表現をしたのは小泉総理の政治的勘で、その過程で悩んでいたのかどうか、決して官邸の誰にも漏らすことはなかった。
下村 恭民, 大橋 英夫 (編)『中国の対外援助』
OECD/DACの枠にとらわれず、国際的には「異質」と言える中国の援助政策に関して、現場の実状に即して、研究者および実務家による共同研究の成果。ODAの教科書としてロングセラーになっている『開発援助の経済学―共生の世界と日本のODA』の執筆陣である下村先生や旧JBIC出身の辻一人先生が執筆。また、東アジアの開発経験に強い関心をもつエチオピアのメレス首相の要請をうけて、ハイレベルの産業政策対話に参画しているGRIPSの大野泉先生や、JICA研究所のリサーチャーも執筆しており、この分野の関係者にとって、まことに有益な一冊となっている。
折田正樹(著)・服部龍二, 白鳥潤一郎(編)『外交証言録 湾岸戦争・普天間問題・イラク戦争』
安保理常任理事国入りを目指していたときのヨーロッパの話があったので、ひとまず立ち読み。ヨーロッパがばらばらだったとあって、まぁP5もいればコーヒークラブもいたのが当時の「ヨーロッパ」なので、それぞれ各国本省と話を詰めようにも、なかなか大変だったろうなぁ。
折田先生は2011年頃までは日本紛争予防センター(JCCP)の理事を務めておられたかと思うけれど、いまJCCPのウェブサイト見てみたら理事から外れられていた。中央大学教授も、この3月で退官されたようなので、辞めてしまったのだろうか。ちなみにJCCPで長年、会長を務められた明石康氏が顧問になっておられるのも、はじめて気付いた。
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