内閣官房 ソマリア沖・アデン湾における海賊対処に関する関係省庁連絡会
2013年3月
「2012年海賊対処レポート」

本件についてまとまったレポートを探していたところ、
これは写真も多用されていて、報告書としても大変分かりやすい。

一時期に比べると海賊による被害は減っているようだけれども、
いまだにロケットランチャーで武装していたり、その危険性は高い。
(ちなみにロケットランチャーを構えた海賊の写真も掲載されている)
P3Cによる他国との連携業務詳細についても記述がある。

興味深かった点は以下のとおり。
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日本の貿易量(トン数ベース)の99.7%が海上輸送に依存

世界で発生している海賊事案は、港の沖合に停泊している船舶に対して闇夜にまぎれて金品を盗み取るといった武装強盗的なものが多い。一方、ソマリア海賊の特徴は、そのほとんどが航行中の船舶に対して自動小銃やロケット・ランチャーを使って襲撃し、ハイジャックしていることである。

近年は、海賊母船として漁船に加え、商船を利用するなど、その手口がますます巧妙かつ大胆になっている。例えば、ハイジャックした商船を海賊母船として使用し、不意をついて他の商船を襲撃するといった事案も数多く発生している他、軍艦を襲撃するという事案も発生している。

2009年6月に「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律」(以下「海賊対処法」という。)が成立し、同年7月から同法に基づく海賊対処行動として、自衛隊の部隊が、ソマリア沖・アデン湾において海賊行為に対処するための護衛活動を行っている。

※ここで自衛隊の「部隊」とは海賊行為への対処を護衛艦により行う部隊と航空機により行う部隊のこと。護衛艦には引き続き海上保安官が同乗。

護衛艦による護衛活動は、護衛艦が船団を直接エスコートする方法により実施している。またエスコートする航路については、モンスーンの影響による海賊発生海域の変化を踏まえ、モンスーンの影響が小さく海賊が遠洋に進出する時期には航路を約200km東方に延長するなど柔軟な運用を図っている。

P-3C哨戒機は、ジブチを拠点として警戒監視や情報収集、民間船舶や海賊対処に従事する他国艦艇への情報提供を行っている。これにより、民間船舶は海賊を回避し、他国艦艇は効率的に警戒監視、立入検査、武器の押収等を行うことが可能となり、海賊行為の未然防止に大きく寄与している。
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ところで、保護対象の船籍でリベリアが多いのは、便宜置籍船(FCC: flags of convenience vessel)が多いためだろう。
リベリアといえば内戦を経験した国だが、そのときに船舶登録・登記がどうなっていたのか調べてみたところ、リベリアの便宜置籍制度は、リベリア政府では無く、アメリカに本社のあるLISCR(The Liberian Registry)が、その許認可活動を担っているとのこと。つまり、内戦時でも、特段問題なくリベリアの船籍登録はアメリカで行われていた、ということなのだろう。内戦時は、このLISCRが政府側の資金源になっているという指摘も散見された。便宜置籍船は水産業においてはIUU(違法、無規制、無報告)漁業の温床として批判を受けているが、麻薬や銃、ダイヤモンドなど資源だけでなく、まさか便宜置籍が内戦の資金源になりうるとは考えてもみなかった。

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このページは、okneigeが2013年4月27日 19:19に書いたブログ記事です。

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