人事を尽くし、運に恵まれた人だ、と思う。尋常ではない苦労と努力、そして、素晴らしいリーダーシップを存分に発揮することで、「iPS細胞」作製という奇跡を、自らの力でつかみとった、日本を代表する現代の偉人の一人である。運命という女神は後ろ髪が無い。つまり、運に恵まれない人は女神と気付いても、後ろからつかまえることすら、できない。自らは語られなかったが、あふれんばかりの自らの才能を信じ、それに真摯に向き合い、磨き上げる決心とともに、途方も無い努力と、最高の研究者と技術者で構成されたチームを率い、そして、運命の女神を抱きしめた。
本書では、山中先生のひたむきな努力が、静かに語られている。そして、先生の苦労も、山ほど語られている。文末で記されているように、「いちばん辛かったのは、基礎研究の世界に身を投じた後、自分の研究が本当に人の役に立つのか、なんの意味があるのかわからなくなった時期」だという。しかし、「ここで研究をやめたら、臨床医の世界から逃げ出して以来、二回目の挫折になる。それはあまりに情けない」(74ページ)という思いで、もう十分というほど努力してきたのに、もう一歩、がんばった。そして、ヒトES細胞の作製成功という遺伝子研究の大進歩をきっかけに、マウス、そしてヒトiPS細胞の発見へと結びつく。
なぜ創薬分野で期待できるか?
人体外で、薬の効能を確認することができる
「研究の継続性が大切だなんて誰がそんなんいうたんや。面白かったら自由にやったらええんやないか」
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