ジャクリーン・ノボグラッツが創設したアキュメン・ファンドは、ルワンダやインドなど途上国の貧困層に向けて、人間として最低限の生活を送る(BHN; Basic Human Needs)ために必要な公衆衛生や水資源、住宅などのマイクロ・ビジネスに投資している。
アキュメンは、そうした投資によって途上国内部から自律的に、貧困の罠を抜け出すために頑張っているビジネスを支援しているソーシャル・ベンチャー・ファンドである。
その活動のベースとして、ノボグラッツがルワンダの女性たちと立ち上げたパン屋のプロジェクト、その後、仲間がルワンダのジェノサイドで被害者になり、加害者になるというショッキングな経験を経て、アキュメン・ファンドを設立するに至るまでのストーリーが描かれている。
先日、ノヴォグラッツが来日した際に東京財団の講演会に参加したが、
とてもチャーミングだけど、言葉に力があって、すごいと思った。
来日時の講演(YouTube)
http://youtu.be/4j-dukKOlT8
援助は必ず選択されるもの、選択されなかったものを決めるため、
不公平感は必ず残る。しかし、一旦援助を受けられなかったとしても、
次のチャンスにも受けられるという期待があれば、不満は代替可能性があるため、
しこりとして残ることは無い。
ビジネスであれば単純である。儲かるか、儲からないか。
今回は儲からなくとも、次の機会に儲かればよい。また、その選択に納得感がある場合も、経済的に区別することは許容される。
アキュメンファンドの第一号投資案件である、アラヴィンドのシンプルなビジネスモデルは、
傾斜料金システムにもとづいていた。
「富裕層は手術代を全額払うが、貧困層は形ばかりの金額を払うか、
ほんとうに貧しい場合は何も払わない。それでだれも追い返されることはない。
当時アラヴィンドでは同じ敷地に二つの病院があり、
金を払う患者には新しいほうの病院で、空調付きの部屋で完全看護サービスを提供して、
支払い能力による差を設けていた。
"無料"の患者、あるいは少額しか払わない患者は、古いほうの施設で治療を受け、
床に置かれたマットで寝ていたが、医師たちは全員、両方の病院に交代で勤務し、
ケアの実質は同じだった。」(320頁)
ルワンダでの西洋人との会話。
「開発の恩恵のほとんどを一方の側だけが受けているという意識が強まっています。
もう一方の側は、のけ者にされていると恨んでいる。
とてつもない金持ちになる人間がいるから、余計にそう思えるんでしょう。
建設された家を見ましたか。大邸宅もある。
ほとんどみな、政府官僚の所有です。」(291頁)
「可能性は市場とフィランソロピーの中間にあった。」(308頁)
「初めは、マイクロファイナンスのことだと思われることが多かった。
しかし、私たちの機関はまったく違うものだった。
女性向けの超小型貸付はせず、少なくとも100万人の顧客にサービスを届けることを
望む企業に対して、数十万ドル、ときには数百万ドルの投資を行う。
私が追い求めたのは、行政や慈善事業が貧困層の期待に応えられなかった領域で、
ビジネスモデルを活かして、効率のいい持続可能なシステムを作ることだった。
民間部門のイノベーションに投資すれば、基本的サービスを
すべての人に手が届くものにする方法を知り、公共の問題の解決に貢献する、
よりよいモデルの構築に役立つと考えていた。」(310頁)
「技術自体ではなく、医療の提供や価格設定、販売促進のシステムを把握するほうが
世界に貢献できる」(325頁)というのは極めて正しい。
「アラヴィンドの成功を別にすれば、助成金はたいていの場合、出資や貸付ほど有効ではない。
特に、貧困層向けの市場を生み出そうとしている場合には。
出資をすれば、私たちは真の意味でオーナーになり、
よりいっそう透明性のある交渉が可能になる。
貸付と出資は、市場規律を課すことにもなる。
時がたてば、それが従来型の資本を集めることにつながり、
私たちが支援したいと考えるイノベーションを育てる鍵になるのがわかった。」(326頁)
「私たちの第一目標は金儲けではなく、持続的な変化をもたらすことだというのを頭においていた。
自分たちの投資スタイルの核を忍耐強い資本(patient capital)と名付けた。
従来の事前でも、従来のビジネス投資でもなく、その中間にある。
忍耐強い資本とは、見返りが少ない可能性を認識しつつ、
比較的、長期にわたって投資される資金だ。企業が離陸し、さらに上昇できるよう手助けする、
広範な経営支援サービスを提供する。」(327頁)
I am a part of all that I have met.(386頁)