グローバル・コンパクトは、企業にとってはCSR活動の一環として理解される。企業のCSRは株価対策(IR)、広報(PR)に留まらず、商取引の現場においても重要になってきており、CSRの対応が売上や利益といった企業存続にもダイレクトに影響を及ぼすようになってきた。グローバル・コンパクトは企業にとって正統性が高く、影響力のある評価基準となっている。NIKEなど製造業における不当賃金労働の問題や、石油資源関連企業(商社含む)にとっての環境負荷など、経営にダイレクトのインパクトのある課題を解決する意思を見せるためにも、グローバル・コンパクト加盟は重要であろう。  しかし課題として、グローバル・コンパクトが国連機関の組織目標を反映した目標となっており、人権・労働基準・環境・腐敗防止といったテーマがメインになっているが、企業の視点からは、人権や労働基準の各項目に重複が感じられ、一般的なCSRの重視する項目とは必ずしも合致していない点にあると考えられる。日本総研の『2008年度版CSR経営動向調査』において、民間企業がCSRで圧倒的に重視するのは環境である。環境の後は、生物多様性、内部通報制度、育児休業制度、社会的課題解決に資するビジネス等と続く。こうした企業側の視点がグローバル・コンパクトには欠けており、国連側の視点で作られた項目が多く、CSRの現状に沿わないという状況は否定できない。  実際、CSRに熱心な企業であっても、グローバル・コンパクトに加盟していない事例は珍しくない。例えば、ファーストリテイリングはユニクロ店頭においてユニクロ商品の回収を行っており、そこで回収された衣料や靴がUNHCRを通じて難民支援の現場で利用されるというリユース活動を行っている。このインパクトは非常に大きいものの、2009年10月現在、ファーストリテイリング社はグローバル・コンパクトに加盟していない。  また、企業にとっては手続き的な煩雑さも加盟を手控える一因となる。CSRが基本的にコスト部門である現実を考えると(日本でいわゆるCSR効果で「食えている」会社は皆無に近いと予想される)、CSRの実態に沿わないグローバル・コンパクト専用の手続きや報告の負荷が高まると、参加の意義は薄くなってしまうだろう。

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このページは、okneigeが2009年11月15日 16:32に書いたブログ記事です。

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